第9章「いつの間にか国民から徴収される新税」については、私も初めて知らされたことが多い。側聞はしており、まさかと思っていたが、日本から中国に大量の丸太が輸出されている実情は、民も官も評価していない上、輸出している木材の生産に多額の補助金が注ぎ込まれていること。山に道を造る、林業機械を買う、山中から立木を間引くための補助金の結果、破格の丸太がバーゲンとなって中国への運び出されるという説は、実によく分かる。補助金行政こそが直接・間接的に日本の森林という国富を持ち腐れにしているという。一見して各省庁が良かれと思って実行している補助金が、日本の文化や社会生活の根本を腐らせていると説得する本書は、学生時代と変わらぬ縄張りを超え、”Science for Science(あるものの探究)”ではなく、”Science for Society(あるべきものの探求)”としての新しい分野の先駆者となっている白井君には教えられること多く、卒業生達に一読を勧める次第である。
「八ヶ岳研究会」とは、2013年に白樺湖畔に面した池の平ホテルで、アジア都市環境学会の国際会議と日本景観学会を開催した機会に「八ヶ岳山麓に二地域居住時代の新天地を創る」勉強会である。昨年この研究会に入ってくれた中島恵理さん(48)が環境省を退職して、この8月、富士見町の町長選に出馬するという。現職の名取重治氏(70)との選挙戦というので、ネットで現況を調べてホッとする。二人ともこの地を活性化するには「無投票だと地域の将来を考える機会がなくなる」「まちづくりには活力が必要」との明るい選挙のようなので、是非「リニア中央新幹線を富士見町経由にすべし。そのためにはA or B案を採用すべき」とJR東海やJR東日本のみならず、国や県に働きかける住民運動を起こして欲しいと考えた。8月8日の選挙後には投票数1位が町長で、2位が副町長として八ヶ岳山麓に新天地を創って欲しいと夢みた。
日本建築学会「建築雑誌」(2021年5月号)の特集17(暑くなる日本-蒸暑アジアからの挑戦)の論考1に、飯塚悟名古屋大学教授の「日本はどこまで暑くなるのか、そのとき建築や都市はどうあるべきか」、論考2にシンガポール国立大学の「Jiat-Hwee Chang氏とJason C. S. Ng氏の「エアコン近代から低炭素社会へ」という論文があり、この二編に注目した。