尾島俊雄研究室
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尾島俊雄研究室

3.11 東日本大震災の緊急提言から五年後 その間に学んだこと

尾島俊雄 尾島俊雄

2011年3月11日、未曾有のM=9の地震と波高40mの大津波という天災、あってはならない福島の東京電力原子力プラント爆発から3年、避難や家族の離ればなれと仕事を失ったままの人、仮設住宅に今も10万余人。福島県では放射能から県外に避難中で、農業や漁業者の風評被害報告等々、今も痛々しい惨状であります。
 
私自身、4月に被災地を歩いて、6月には「東日本大震災からの日本再生」(中央公論新社)を緊急出版し、世界にこの惨状を知らせるために英語、中国語、韓国語に翻訳出版。9月には、大阪綿業会館で国際シンポジウムを開催するなど、少しでも復旧復興に寄与できればと考えていました。
 
しかし、この3年間にみる日本の復旧復興への足どりは、あまりに遅々としていることは明らかで、多くの被災者が失意の内に自殺や体調不良を起こしています。
 

2011年3月に緊急提言してから5年で学んだ結論を以下付記する。
 
・第一に、豊かにして脅威である自然を神とする日本文化を大切にして、一人一人のはかない生命も人々の絆で結ばれて強固になることを教え学ぶ。
 
・第二に、2050年の地球環境に対する日本国としての国際公約を守ること。そのためには、新しい価値観と生活様式の転換による再生可能エネルギーの活用と、原子力発電所を安全にして、安心できるプラントにする科学技術の進歩が不可欠である。
 
・第三に、ボランティアや自衛隊、米軍の善意で救われた多くの被災者を考えれば、日本国家としての自覚と自立した行動力を築くために憲法には、国のあるべき姿、国民が果たすべき役割を明記し、明日への夢と希望を与え、日本人としての勇気と誇りを持たせることこそが信頼される国づくりになる。
 
・第四に、私達は日常生活する範囲(拠点、on site)と非日常生活圏(広域、Network)を持ち、災害時には日常生活圏が直接影響を受けるも、これに一時耐えることが自立であり、その安全策をもつことが生活のベースである。然る上で、広域からの支援(back up)が得られることで安心が保障される。自助(on site)・互助(Network)・公助(国家)が日本国民の安全・安心の基本である。
 
・第五に、この大災害を機会に、原子力発電所は全て9電力の民間経営下に置くことは止めて、国の特別の機関とすべきである。フランスなどは国営の電力会社であるからこそ原発中心の電力供給が可能であること。少なくとも、原発事故は、民間の災害保障や民間企業のできるレベルではない。
 
・第六に、1950年から2000年の50年間で、日本の人口は8,000万人から12,000万人と4,000万人も増加した。その大部分が大都市に集中したが、地方都市に対しても国土の均衡ある発展を図った全国総合開発計画であった。地方の社会資本としてのインフラストラクチャー(空港・海港・新幹線・高速道路・各種工場コンビナート・大学等の公的箱物)はもとより、住宅やオフィス、各種学校等の民間施設は、2050年までに予測される地方での2,000万人以上の人口減少と高齢化にあって、過剰投資になっている。その活用のためにも、地方への機能分散と人口分散によって職場や生活の活性化が期待される。
 
・第七に、職場や教育機関の地方移転を推進することによって、生活拠点の二重化を推進する。地方主権が確立されつつある時代にあって、地方都市機能を充実すれば、十分に非常時の大都市のback upが可能になる。データセンターのback upが必然であるように、生産と消費、農村と都市を分離させた対策から、両者を併せ持つ共存型へ、大都市と地方都市の関係を強化するソフト・ハード両面でのプロジェクトを緊急に推進すべきである。
 

「(続)日本は世界のまほろば」の旅
 
東日本大震災による福島原発事故の影響は、日本のエネルギー基本計画や災害基本法・災害救助法の抜本改正を要している。特に、地域防災計画の原子力災害対策編に伴う原発立地30km圏の避難対策を考えれば、「日本は世界のまほろば」を出版したことに恥ずかしさと同時に、原発立地周辺を視察する必要性を痛感した。2013年1月から2年かけて、旅をした成果を、「日本は世界のまほろば2 - 原発立地周辺」として、中央公論新社から出版した。


プロフィール

1937年9月 富山県富山市太田口通りで誕生
1956年3月 富山県立富山高等学校卒業
1960年3月 早稲田大学第一理工学部建築学科卒業
1965年3月 早稲田大学院理工学研究科博士課程修了
1965年4月 早稲田大学理工学部専任講師
1969年4月 早稲田大学理工学部助教授
1974年4月 早稲田大学理工学部教授
2008年5月 早稲田大学名誉教授

1973年〜98年 東京芸術大学美術学部講師(25年間)
1980年〜08年 浙江大学顧問教授(中国)
1981年〜98年 九州大学大学院工学研究科講師(17年間)
1988年〜92年 東京大学先端科学技術研究センター客員教授(4年間)
1992年〜94年 日本都市問題会議会長(2年間)
1992年〜97年 早稲田大学理工学総合研究センター所長(5年間)
1993年〜99年 工学院大学大学院客員教授(7年間)
1994年〜97年 東京大学生産技術研究所客員教授(3年間)
1997年〜99年 日本建築学会会長(2年間)
1997年〜14年 職芸学院院長(富山)
2000年〜05年 日本学術会議 第18期・第19期、第5部会員
2000年〜02年 早稲田大学理工学部長(2年間)
2000年〜15年 NPO法人アジア都市環境学会理事長
2002年〜08年 同済大学顧問教授(中国)
2006年〜12年 日本学術会議連携会員
2006年〜14年 天津商科大学顧問教授(中国)
2008年〜13年 日本景観学会会長
2015年〜16年 (公財)セコム科学技術振興財団理事長

【現在】
2000年〜   日本工学アカデミー会員
2000年〜   (社)都市環境エネルギー協会理事長
2000年〜   日本建築学会名誉会員
2003年〜   三谷産業(非)監査役
2005年〜   GINZA OJIMA LAB.(略称GOL主宰)
2006年〜   大韓建築学会名誉会員
2006年〜   とやまふるさと使節
2006年〜   吉林建築大学名誉教授(中国)
2008年〜   早稲田大名誉教授
2008年〜   (財)建築保全センター理事長
2015年〜   アジア都市環境学会名誉会長

【功績・受賞】
1970年  日本建築学会万博特別業績賞
1970年  空気調和・衛生工学会論文賞
1971年  空気調和・衛生工学会業績賞
1972年  日本建築学会論文賞
2005年  環境省環境保全功労者表彰
2007年  大隈記念学術賞
2008年  日本建築学会大賞


著書

NO 書名 出版社 発行年月日
1 空気調和設備の経常費 丸善
1967.1
2 日本の地域冷暖房 日本工業新聞社
1971.7
3 都市の設備計画
鹿島出版会
1973.6
4 熱くなる大都市
NHK出版
1975.6
5 らいふめもりい
雄山閣
1975
6 はうじんぐめもりい
ABC+JES出版
1978
7 中国の都市計画 早大出版部 1979.8
8 日本的建築界 中国建築工業出版社 1980.1
9 全3巻 印度 写真集
毎日コミュニケーション
1980.1
10 建築を教えるものと学ぶもの
鹿島出版会
1980.6
11 リモートセンシングシリーズ都市
朝倉書店
1980.11
12 省エネルギー建築の設計実務 鹿島出版会 1981.11
13 日本のインフラストラクチャー
日刊工業新聞社
1983.1
14 建築環境科学ハンドブック
森北出版
1982.4
15 新建築学大系 9 「都市環境」
彰国社
1982.5
16 全3巻 西蔵 写真集
毎日コミュニケーション
1982.5
17 全3巻 承徳 写真集
毎日コミュニケーション
1982.7
18 アングラ東京構想 早大尾島研究室 1982.11
19 中国建築・名所案内 彰国社 1983.11
20 絵になる都市づくり 日本放送出版 1984.8
21 建築の光熱水費 丸善 1984.8
22 21世紀建築のシナリオ 日本放送出版
1985.2
23 東京大改造 筑摩書房 1986.9
24 東京−21世紀の構図 日本放送出版 1986.1
25 Tokyo towards the 21st.century 早大尾島研究室 1987
26 未来住宅
読売新聞社 1988.11
27 21世紀住宅のシナリオ 早大出版部
1989.7
28 早大理工80年をふりかえる 新しい出発のために 早大理工学部 1988.4.1
29 建築JAVシナリオ A
   
30 建築JAVシナリオ B
   
31 建築JAVシナリオ C
   
32 早大100周年 21世紀への展望
  1985.4
33 アジア国際シンポジウム
日本建築学会100周年
  1987.3
34 都心に住まいと賑わいを JPR 1990.2
35 下町マンハッタンからアメリカンシティまで 日経アーキテクチュア 1991.5
36 どうなる どうする東京
日本建築学会+彰国社
1991.5
37 東京を開く−尾島俊雄の構想 プロセスアーキテクチュア 1991.11
38 異議あり! 臨海副都心
岩波書店
1992.3
39 超高層ビルと未来都市
ポプラ社
1992.4
40 いま建築教育は−大学における現状と課題−
日本建築学会
1993.9
41 地域冷暖房
早大出版部
1994.9
42 ひさ子短歌集
  1993.9
43 東大 先端研 A
  1991.1
44 東大 先端研 B
  1991.1
45 環境共生都市
  1993.7
46 東京の先端風景
早大出版部 1995.1
47 地球文明の条件
岩波書店
1995.3
48 都市産業革命
プレジデント社 1995.3
49 建築の光熱水原単位(東京版)
早大出版部 1995.6
50 建築設備の技術革新
早大出版部 1995.11
51 安心できる都市
早大出版部 1996.1
52 Geo-Space Urban Design
John Wiley & Sons,Inc.
1996.8
53 In HARMONY with the EARTH
CPIEPI
1996
54 市民参加の都市計画
早大出版部 1996.11
55 市民のための災害情報
早大出版部 1997.6
56 千メートルビルを建てる
講談社
1997.11
57 東京の大深度地下(建築編)
早大出版部 1998.5
58 Japanese Urban Environment
pergamon
1998
59 環境革命時代の建築
〜巨大都市東京の限界と蘇生〜
彰国社
1998.1
60 市民が主役のまちづくり
〜富山県魚津市の挑戦〜
早大出版部
1999.1
61 完全リサイクル型住宅(木造編)
早大出版部 1999.3
62 都市居住環境の再生
〜首都東京のパラダイム・シフト〜
彰国社
1999.3
63 DSMの時代
〜持続可能なエネルギー供給を目指して〜
早大出版部
1999.5
64 大都市再生の戦略
〜政・産・官・学の共同声明〜
早大出版部
2000.5
65 環境に配慮したまちづくり
早大出版部
2000.7
66 完全リサイクル型住宅(スチール編)
早大出版部
2001.2
67 都市と車の共生
早大出版部
2001.2
68 デジタル現場建築CALS構築法
新建築社
2001.5.1
69 地方都市再生の戦略
早大出版部
2001.10.5
70 理工文化のすすめ
東洋経済新報社
2002.2.14
71 ヒートアイランド 東洋経済新報社 2002.7
72 完全リサイクル型住宅(生活編)
早大出版部
2002.12
73 都市環境学 森北出版 2003.5.10
74 太田口物語 NPO法人アジア都市環境学会 2004.6.1
75 建築プロジェクトレビュー 電通本社ビル
建築資料研究社
2005.4.30
76 この都市のまほろば 中央公論新社 2005.5.15
77 日本学術会議 勧告
日本学術会議
2005.4
78 日本学術会議 声明
日本学術会議
2005.4
79 日本学術会議 大都市の未来のために
日本学術会議
2005.6
80 日本学術会議 新しい学術のあり方
日本学術会議
2005.8
81 建築産業再生のためのマネジメント講座
早大出版部
2005.9.10
82 未来を拓く新しい建築システム
建築技術
2006.1.10
83 ワボットの本 中央公論新社 2002.1
ワボットの本 2 中央公論新社 2003.12.1
ワボットの本 3 中央公論新社 2004.9.25
ワボットの本 4 中央公論新社 2004.11.25
ワボットの本 5 中央公論新社 2004.12.20
ワボットの本 6 中央公論新社 2005.4.25
ワボットの本 7
中央公論新社 2007.3
84 この都市のまほろば Vol.2 中央公論新社 2006.10.20
85 この都市のまほろば Vol.3 中央公論新社 2007.10.10
86 都市環境学へ 鹿島出版会 2008.1
87 尾島研究室の軌跡 鹿島出版会 2008.2
88 この都市のまほろば Vol.4 中央公論新社 2008.10
89 この都市のまほろば Vol.5 中央公論新社 2009.10.26
90 みんなが知りたい超高層ビルの秘密 ソフトバンククリエイティブ 2010.5.19
91 日本(やまと)は世界(くに)のまほろば 中央公論新社 2010.10
92 東日本大震災からの日本再生 中央公論新社 2011.6
93 この都市のまほろば(東京編) Vol.6 中央公論新社 2012.7
94 この都市のまほろば Vol.7 中央公論新社 2013.3
95 日本は世界のまほろば2 中央公論新社 2015.5

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