2014年から5年余、早稲田大学東京安全研究所で、伊藤滋・尾島俊雄・濱田政則名誉教授を中心に、「東京の減災戦略」「防災性向上」「インフラ老朽化対策」「経済被害削減」を中心とした研究成果を出版した。
- 伊藤編の都市計画分野 4冊
- 尾島編の建築分野 3冊
- 濱田編の土木分野 3冊
これを基に、2020年1月に早大井深大記念ホールで、「防災・減災の行方」と題し、『国土と社会の強靱化はどこまで進んだか』をテーマにシンポジウムを開催した。
その結果、1995年の阪神・淡路大震災からの25年、2011年の東日本大震災からの10年は決して失われた年月でなく、2013年の国土強靱化基本法を待つまでもなく、専門的な技術や対策は相当進んだこと。しかし、それ以上に都市の拡大や老朽化が進み、加えて自然災害の規模は想定以上に巨大化しつつあることから、減災対策が喫緊の課題である。特に、政治・行政等の公助限界を考え、共助・自助の面では、東京の安全・安心は、私たちは各自の自己責任で取り組むべきであること。しかし、不安のみが先行してのパニックが心配されることもあり、本研究を指導された先生方から「生命を守る強力な建築・土木・都市計画分野の技術が、どれ程進んでいるか」について知る必要があるというご意見をいただいた。
これを若手研究者に伝えたところ、鹿島学術振興財団の研究助成を得て、早稲田大学の秋山充良教授が中心に検討して下さった。
2020年12月、その中間報告会があり、次のような研究目次(案)が出された。
「首都東京の災害から命を守る技術」(案)
序 予測される首都東京の被災 尾島・秋山・(福島)
(東京直下地震・南海トラフ地震・富士山爆発他/気候変動・津波・洪水・新型コロナ・原発事故)
1編 建築技術分野
1章 超高層建築 小林紳也/(高口洋人)
2章 地下空間 原 英嗣/(村上公哉)
3章 仮設住宅・みなし仮設 小林昌一/(小野道生)
4章 即時耐震性能センサー (楠 浩一)/増田幸宏
2編 土木技術分野
5章 洪水(予測・対策) 関根正人/(秋山充良)
6章 津波 秋山充良
7章 コンビナート 濱田政則
8章 防災・教育 重川希志枝/(福島淑彦)
3編 都市計画技術分野
9章 BCD・分散電源・CGS (尾島俊雄)/中嶋浩三
10章 防災情報・ICT 渋田 玲/(増田幸宏)
11章 木造密集地 三舩康道/(長谷見雄二)
12章 エリア防災DCD 関口太一/(小野康道)
4編 総論
大丸有地区モデル(伊藤 滋) 加藤孝明
秋山充良・原 英嗣・増田幸宏氏等の意見では、『2021年には東日本大震災から10周年に当たり、その間の建築・土木・都市計画分野での技術開発は、それなりの成果もあったが、同時に、新型コロナ禍での三密対策やロックダウンの実状から、都市そのもののあり方やライフスタイル、価値観の転換を余儀なくされている今日、シリーズ10冊の既出版物の見直しとアフターコロナ時代の建築・土木・都市計画分野で連携して、ソフト・ハード面からの再構築を検討することになった。