坪内逍遙の双柿舎に因んで育てた柿を愛でる

 1997年3月、現在の住所に引っ越したとき、完全に撤去された庭に実生の柿の木が2本残されていた。熱海の坪内逍遙の別荘であった双柿舎に因んで、この2本の柿の木を大切に育てた。「桃栗三年、柿八年」と言われるとおりに、いまや巨木に育った2本の柿の木による落葉と落柿の処理・処分に困っている。留学生達が居た2010年頃まで、彼等に処理・処分してもらっていた。最近の十余年間はご近所や庭師にお願いしながら、熟した実が落ちる前に、沢山の柿の実や落葉の収集は私の仕事になった。毎年90ℓのゴミ袋に20袋程の落ち葉と柿の実は、1本に少なくとも200個として、400個もの分配が大変で、多くは廃棄することになった。その上、御歳暮にもっと立派な富有柿等が送られてくるから大変である。しかし、この2本の柿の大木は、若葉や紅葉の美しさは格別で、加えて沢山の鳥達の賑わいなど、東京の自然とは思えない風情を演出してくれる。

 2020年から自宅の車庫を改良して、東京尾島俊雄研究室を発足した機会に、通りに面してショーウィンドウ的飾り棚を作った。その飾りとして、自庭に咲く花卉を生けることにしたが、ミカンや柿の実など樹実は2週間は新鮮だが、草花は1週間が限度で、年間50週も自庭で採集する草花では工面できず、観葉植物等で誤魔化すことになった。

 2020年から2021年にかけてのコロナ禍で、この辺でもジョギングや散歩する人が増えるにつれ、何かと話題になり、気のせいか、近所の庭にはバラや梅、藤や椿等の素敵なガーデニングが目立ってきた。自庭の柿は、1本は富有か次郎で甘柿である。もう1本は百目らしく渋柿と思えるが、熟すと鳥のよいエサとなって食い散らかされ、処理・処分に困る。何故か今日は「柿の日」とかで、テレビは子規の「柿くえば鐘が鳴るなり法隆寺」等の俳句を盛んに流している。自宅に居ても近くの南蔵院の鐘の音が聞こえていたはずが、気づくと最近は全く聞こえなくなった。この5~6年で車とマンションが急増したためであろう。

 今年は渋田君と小林さんに手伝ってもらって柿の大枝を切り落とし、たくさんの実をつけたままの柿の枝をショーウィンドウに飾ることにした。幼い頃から親しんだ「池坊」流とは違う草月流もどきの大胆な投げ入れで挑戦する。

 落葉や枯れ木のみならず、毎年剪定したバイオマスはすべて一般か産業かを問わず焼却される。しかし都市緑化が進み、不燃ゴミやプラスチック等は紙に代替される時代、都心ゴミ焼却場の排熱が少なくなることがないと思われる。

 目下、環境省にお願いしているのは、東京都心の清掃工場22ケ所の排熱をすべて地域暖房に活用すると、年間350万tonのCo2が削減できる。これは東京都が2030年に50%、3,000万ton、2050年に100%、6,000万ton(日本全国の森林が吸収するCo2量に相当する)、Co2を削減する「ゼロエミッション東京戦略」にとって、大きな貢献である。しかも、このようなことはフランス等のEU諸国では当然100%実施している。東京都ではダイオキシン問題から庭の焚き火も禁じている現状では、いつか日本が環境後進国か途上国になっているのだ。自宅の屋根にソーラーを設置する義務よりも、再生可能エネルギーに計算される都心緑化や街路樹・自庭のバイオマス熱利用こそ、一刻も早くその利活用を進めなければならない。

ショウウインドウに利用できた自庭の植物に〇印を付した。


(1~3月)
〇水仙、〇松、竹、〇梅、〇菫、
〇石楠花、柊、桃、沈丁花、
〇椿、〇寒蘭、 木蓮、梨花、
カスミ草、〇シクラメン、サクラ草

(4~6月)
〇桜、〇木瓜、ユキヤナギ、〇芍薬、
〇藤、〇海棠、夜来香、〇杏花、
〇茶木、〇南天、〇ツツジ、銀杏、
〇満天星(ドウダン)、〇鈴蘭、
〇馬酔木、〇菖蒲、牡丹、山吹、
紫陽花、夾竹桃、〇紫式部

(7~9月)
〇バラ、〇百日紅、〇アカンサス、
野薊、〇トキワサンザシ、ザクロ、
〇ドクダミ、百合、山漆、朝顔、
〇ナデシコ、芙蓉、タマカンザシ、
〇萩、〇菊、女郎花

(10~12月)
泰山木、〇金木犀、〇榊、〇山茶花、
ブナ、〇山法師、〇柿、チューリップ、
〇山桃、〇柚、〇山茶花、ヤツデ、睡蓮、栗、唐楠、ハゼ、〇ホトトギス、〇紅葉、
〇キンカン

 東京尾島俊雄研究室の敷地は、自宅を含めて800㎡、屋根面積は250㎡として、ソーラー2kW、Co2吸収の樹木20本、庭の面積が500㎡で、年間Co2吸収は0.13ton、年間バイオマス賦存量は0.5㎥(0.3ton)として、(Co2 ton1万円として13,000円、燃料ton2万円として6,000円相当)。こうした地産地消型のエネルギーやCo2収支等は、金銭収支以上にこれからどの家庭でも要求される。

 第6次エネルギー基本計画の数値目標がようやく決まったが、原子力20~22%、再生可能エネルギー36~38%の目標達成は相当の努力が必要かと思われ、日常生活での省エネが別の面から大切になる。

 目下、大阪・関西EXPO’25で達成せんとしている水素・アンモニア会場内利用に当たって、とてつもない努力が強いられる状況を考えると、日頃からもっと身近なグリーンエネルギーの利活用を考える必要がある。

 森林の吸収するCo2は2.6ton/ha、バイオマス蓄積は10㎥/haとして、東京23区、6万haの20%が緑化として1.2万ha×10㎥/ha・年=12万㎥/年のバイオマス燃料(再生可能エネルギー)が利用できる。

 東京尾島研究室のソーラーと庭木が再生可能エネルギーを活用するに当たって、ソーラーは施設料が必要なので、金銭収支はゼロになるも、庭木のバイオマスとCo2吸収分は公に寄与することは確かであり、こうした些細な収支もこれから大事にしなければならなくなる。