1980年春、中国科学院で半年間の在外研究を終えての実感である。日本の建築技術は全て古くは中国、新しくは欧米の模倣としか見られていないことから、日本建築の本質を世界に知ってもらうには、1964年のオリンピックや1970年の万博以降の日本建築の1980年代における高度な専門技術を映像で伝えることが最適と考えた。
1982年から文部省の研究助成や民間企業の募金を得て、1983年から岩波映画にお願いし、またこの間の記録はNHK出版から「21世紀建築のシナリオ」と題して出版。15分×25本のビデオを完成。引き続き1988年から住宅シリーズ25本に取り組み、そのシナリオは1989年「21世紀住宅のシナリオ」シリーズとして早大出版部から出版し、25本の住宅シリーズを1990年には完成した。50本の建築と住宅のビデオを製作した上で、大学の教材として担当者に無料で配布していた。
次なる都市シリーズを製作するに当たっては、バブル崩壊もあって資金が集まらず、これまでの成果を早大出版部に販売してもらうことにして、その20%を大学に寄附してもらうことによって数本を製作。また英語や中国語版、さらにはVHSビデオテープからDVDビデオへの転換も考え、日本学術振興会にも助成を申請した結果として、DVD化を行った。
2007年、私が大学を定年退職したときには合計60本の製作を終えていたが、それ以降は早大理工総研の研究会に委ねることにした。
その時から15年、DVD化した60本のメディアが劣化して利用できなくなった上、VHSビデオ版として5セットの蓄えがあった分も新鮮みがないことや製作された先生方の多くも逝去され、岩波映画の倒産等もあって、理工総研の研究会や著作権者からも私に全て一任されて今日に至ってしまった。
私の研究室の卒業生を中心に、2001年設立したNPOアジア都市環境学会に、2020年、この成果(負債?)を引き受けてもらうことにして、有識者の意向に沿ってYouTubeにuploadしてもらうことになった。今後のビデオテープの劣化も考えれば、この時点でデジタル化しなければ、20年前の貴重な記録や努力が水泡に帰すると考えた次第である。この間、残された画像大系の1セットは八ヶ岳の尾島山荘に、2セットは某大学に寄贈し、1セットは当方で保管することにした。
日本の建築界が輝いていた1980年代の先駆者達の建築にかけた情熱と当時の建築界の実態を、この映像を通して見て下されば、コロナ感染対策でStay Homeされている方々の一興になればと考え、公開した次第である。