Blog#100 (公財)祈月書院の安部明廣理事長 退任の報を見て

 2023年11月16日、安部明廣先生より「小生、来年で90才になるのを前に、(公財)祈月書院の理事長を熊野君に託し、最後の研究会講師は、旧知の河野通和氏に『教養とは何か』というご講演をお願いした」とあり、私には2008年の研修会で『日本の建築と都市の実情』で講演頂き、“皆が都市と地方の両方に家を持てば、日本の過疎化問題は解決する”という壮大な指摘に、一同なるほど、一瞬気を大きくしたことを思い出します。加えて、「この都市のまほろば」シリーズvo.2(2006年 中央公論新社)で祈月書院を取り上げてもらって恐縮」とのお手紙を頂いた。

 文中にあった中央公論編集長の河野通和氏は、私が「この都市のまほろば」シリーズを書くきっかけをつくってくださった恩人であった。私学・早大の将来を展望する「都の西北 早稲田の杜」なる記事を中央公論誌(2002年6月号)に寄稿させてもらった上、「この都市のまほろば」シリーズvol.1の20都市は、雑誌中央公論誌に20回連載したのがシリーズ7巻にもなるきっかけであった。その後、如何お過ごしかと案じていた人で、『教養とは何か』との河野氏の講義内容を知りたいものです。

 同時に、安部先生の出身地である島根と出雲については、「八ヶ岳研究会」と「縄文社会研究会」で常々話題になる、関心の高い所です。

 特に、昨今のカーボンフリー時代の原発再稼働の情報は大きな関心事で、中国電力は島根原発2号機(出力82万kW)の再稼働時期を2024年8月と発表しました。2022年6月9日、島根県・丸山知事の再稼働容認から、2012年1月の停止から12年7ヶ月後に再稼働の決定である。

 この島根原発については「日本は世界のまほろば2」(2015年5月 中央公論新社)で詳細に記している。再稼働されれば、これまでの54基中6発電所再稼働以降、沸騰水型で初めてであること。何よりも、地元自治体の同意を正式に得たこと。全国唯一の県庁所在地にあって、半径30km圏内の約46万人を避難させねばならぬこと。その上、既に停止から11年余、運転経験のない従業員も多いとか。

 Blog69(2022年8月)に、2014年7月の松江市ヒアリングからPAZ(5km圏)、UPZ(30km圏の人々の避難訓練の実態)を知る者として、少なくとも、この島根原発の状況を学ぶべきと書いたこと。その上で、目下も八ヶ岳山麓への避難計画を検討していること。

 既に住民避難訓練の実施している島根モデルを随所で述べているのは、安部先生の祈月書院での創立から90年の間に果された県民教育を期待してのことである。 2024年、島根原発が予定通り再稼働され、計画通りに避難訓練もされれば、当然、PAZを結界に、UPZは(氏子による)常時避難訓練区域となる。その上で、自治体によるモニター情報を完備し、安全な距離(250km)を保った二地域居住制度を創設する。

 使用済み核燃料の最終処分場が世界中に見当たらぬ限り、現在地で保全し続けるほか解はない。幸い、島根には1万年以上昔の縄文時代にも生活が営まれていたこと。2004年、日本学術会議会員として安部先生が国際協力常置委員長としてG8科学アカデミー共同声明でご苦労されていたことを知る者として、島根原発から250km以上離れた横浜に目下居住されながら、島根のことは次世代に託されるのではなく、(二地域居住者として)島根原発周辺に出雲大社を本宮とする原発鎮守の神社を原発の核廃棄物処理場の近くに設立して、その氏子代表としての役割を果たして欲しいと願う次第である。

島根原発 UPZ(30km圏)

祈月書院の撰名は、安岡正篤先生による「七難八苦を我に与え給え』と月に祈った尼子氏の忠臣・山中鹿之助の故事から。