10年前の2016年6月、西岡哲平君の車で、越前一之宮の気比神宮から福井県の原発銀座を視察した。日本の原子力の未来を開く使用済核燃料の処理・処分を目指していた高速増殖原子炉「もんじゅ」を鎮守するため白木浜と、1970年の大阪万博会場に日本で最初の商用原子力発電所から電力を供給した美浜原発を鎮守するため、丹生の浜辺に鳥居を建設する夢を見た。
今度、その写真を撮影するのが目的で、2023年12月16日(土)、夢見たこの地で本当に気比神宮の鳥居を勧請して日本の原子炉の鎮守にしたいと考え、案内してもらった。幸い、今度は円満隆平君と松原純子さんも一緒で、この夢の協力者に期待してのことである。
2011年の福島原発事故から、日本中の全原発54基が停止したが、2023年8月には地元の同意で再稼働した原発は、関西電力の大飯・高浜・美浜、九電の玄海・川内、四国電力の伊方原発の6発電所で11基である。なんと、そのうち関西電力の原発は大飯471万kW(1号-117、2号-117、3号-118、4号-118)、高浜338万kW(1号-82、2号-82、3号-87、4号-87)、美浜166万kW(1号-34、2号-50、3-82)の11基(約1,000万kW)と殆どの原発が再稼働して、今日、関西電力は50%を原発に依存している。その結果、電力料金は日本で唯一値上げなしで、CO2削減にも多大な貢献をしている。
COP28での岸田首相発言や日本のエネルギー基本計画の見直しで、福井に立地する原発のあり方は、日本の将来を決定するお手本である。しかし、「日本は世界のまほろば」(2015年5月、中央公論新社)の後記に、使用済みの核燃料の最終処分場が見当たらぬ限り、現在の地で原発やその使用済み核燃料を保全し続けるほか解はない。とすれば、その地でこれから千年、万年の単位で維持管理し続けることが不可欠になる。然るに、その解決法は全く分かっていない以上、先ずは神頼みである。冗談ではなく、本当に春日大社、厳島神社と共に日本三大大鳥居の一つ、気比神宮の朱の大鳥居を勧請して、この地に神社の氏子制度の如き「災い」を取り除く仕掛けと仕組みを考えて見るべきと考えていたのが、白木浜と丹生浜に鳥居を設けて、その内側を結界とする夢の実現である。
北陸新幹線が来年3月に敦賀まで延伸するに当たって、立派な駅舎が建設中の敦賀駅で12月16日(土)、円満・松原さんと合流。西岡車で、先ずは気比神宮の朱の大鳥居を撮影して後、色ケ浜から新設されたトンネルを抜けて白木浜へ。白木漁港から「もんじゅ」原発を鎮守するに適した鳥居の位置を考え、撮影して美浜町へ。10年前に泊まった民宿・中村屋は増築されて立派になっているのを考えると、再稼働した原発作業員の宿舎として今も活用されているのか。10年前同様、宿舎前の丹生の浜辺から2基の美浜原発のそれぞれに鳥居のフレーム枠内に鎮守できるようイメージしての写真撮影(図参照)。
両原発共に海辺に立つことから、厳島神社の大鳥居の如きコラージュ写真になってしまったが、それも又、良しとする。
続いて三方五湖の縄文博物館に行く前にご当地名物、三方のうなぎや「源与門」で「真蒸重四切れ」に満腹。
10年前に来たときは月曜の休館とあって観ることのできなかった福井県立若狭三方縄文博物館へ。なんと又しても12月中は休館とあって驚いたが、幸い、主目的は2018年に内藤廣設計で開館した福井県年縞輪博物館であり、それが開館していたので早速、学芸員にお願いして詳細な説明をしてもらいながら見学する。
三方五湖の中心に奇跡の湖・水月湖があり、その湖底に厚さ45mのタイムマシンとも考えられる泥の層である7万年もの縞々があった。これは「年縞(ねんこう)」と呼ばれ、水月湖の年縞は世界に比類のない完璧なものとわかった。7万年の縞々には過去の気候や天変地異が記録されている。この調査が進むにつれて、世界の歴史、考古学には欠かせない役割を担うに当たって、水月湖の年縞記録は年代決定の世界標準の「ものさし」に採用された。この成果を福井県は見事な博物館に展示していることから、福井県若狭地方にこれまでにどれ程の天変地異が起こったかを知る貴重な資料となっていることを知って、入念に7万年の年縞に見入った。
新しい年代から、1965年の台風、1953年の水害、1662年の大地震、1586年の天正地震、7253年前の鬼界カルデラ・火山灰、2万9830年前の大山・火山灰、3万年前の姶良火山灰、4万3千年前の古富士の火山灰等の記録が読み取れるから驚きである。巨大な地震や火山灰、気候変動による植物生態の相異が年代事に地層に刻まれている様子から、この水月湖周辺の風景を再現した映像も新鮮であった。
すっかりこの博物館の視察で時間をとり、夜はあわら温泉で年縞と原発の鎮守について話し合う。翌日曜日は3億年前の福井県立恐竜博物館へ。この博物館も又、世界レベル以上の再生で、3億年前の世界に入り込んでの体験。すっかり子供のようになって、福井県の博物館で遊ばせてもらう。
予想した吹雪は程々の霰が降ったくらいで、福井名物・勝山の手打ち蕎麦「八助」で「おろし蕎麦」と「とろろ蕎麦」に満足して、朝倉氏の一乗谷遺跡へ。この博物館も又、遺跡の再生以上に立派な新館が出来ていて驚く。
帰京の時間ギリギリまで福井の博物館見学に満足して、越前ガニを食べ損ねたので「越前かにめし弁当」を買って、東海道新幹線で帰京する。
この旅は12月15日の金沢市での三谷産業(株)役員会に続くビジネスコンテスト2023に参加して、エントリー8社の最新技術のお披露目と、AI中心のコンテストに学ぶこと多く、金城楼での夕食や東茶屋「ハの福」での懇親会を併せての日程消化と、その後の福井県での博物館や原発視察であっただけに、この満たされた日々の連続に感謝する。