2020年8月、突然「この都市のまほろば」vol.1を電子書籍出版しないかとの電話であった。「一読者としてこの本に感動した。ついては自分がその仕事をしているので協力してほしい。」滅多に直接電話に出ない私は、何かの運命と思ってOKしてしまった。どんなノルマや利益があるか判らないまま、コロナ禍の新常態の状況下、時代の波に乗った。
本書のシリーズは、事実上、全7巻とその総まとめとしての「日本は世界のまほろば」シリーズ全3巻で、合計10巻は2017年7月に終了しており、出版社も既に絶版として販売を終えている。依頼された電子書籍出版は、著者の承認だけで処理できる由。手数料は必要だが、読者次第で収支は十分可能というので、その後は事務局(NPOアジア都市環境学会)にお願いすることになった。
それから4ヶ月後、350頁の校正が送られてきたので、お正月に熟読することになった。「この都市のまほろば」vol.1は、雑誌「中央公論」に2003年4月号から2004年12月号まで連載した20都市を単行本とし、2005年5月、中央公論新社より「この都市のまほろば(消えるもの、残すもの、そして創ること)」と題して、編集は関知良、写真は高橋信之、挿絵は藪野健さん、私が著者として出版したものである。
早稲田大学教授として最も多忙な時期に4人が一緒にこの20都市を歩き、楽しく議論しながら著した書である。十分に時間をかけた現職時代の作品だけに、改めて読み直してみるとよく勉強している上、中央公論の編集者や中央公論新社の目が通っているだけに殆ど修正するところがなかった。20年前の著作であるが、それぞれの都市への熱い思いは、今も殆ど変わらなかったことに、むしろ驚いてしまった。同時に、日本は失われた20年と言われるだに、上海・ソウルの海外2都市を除いた日本の18都市は全く変わっていないので、当時提言した試みが成功すればと今も思えてきた。従って、vol.1が読まれることに成功すれば、是非ともvol.2~7のみならず、「日本は世界のまほろば」も電子書籍出版してほしいと考えた。アフターコロナ時代の二地域居住や地方創生の支援策としても、原発立地周辺の再生に当たっても、今度の試みを機会に、一緒に考えてほしいと考える次第である。COVID-19の禍がいつ収束するか判らず、事実上ロックアウト状況下にあって、改めて、本書シリーズの抜本見直しの旅をしてみたいと考えた2021年の長い長い正月休みであった。
(2021年4月初旬 amazonで販売予定)