「アフターコロナ時代の都市環境」の「NPOまほろば賞」について

 2020年10月27日、NPOアジア都市環境学会が会員向けに募集した論文の締め切り時、世界のCOVID-19の陽性者4,317万人、死者115万人。

 2020年12月14日に論文選考会が開かれ、34編中3編がまほろば賞に選ばれた。私も選考委員の一人として全ての論文を読んだ結果、それぞれが刺激的で、新鮮な論文に感銘した。コロナ禍の惨状下にあって、会員諸兄がこの非常事態に如何に発言の場を求めていたかを知った。従って、選考に当たっては、まずは類型化して読みやすい論文集として出版することに加えて、ISBNには定価をつける必要があることや、まほろば賞の贈呈についても議論した。

 出版作業は全て三浦昌生君が九州で仕上げてくれることになり、表紙は渋田玲君が担当して、2021年2月1日、NPOアジア都市環境学会編の著作集が手元に届いた。

 この日の米国ジョンズ・ホプキンス大学発表のCOVID-19の陽性者は1億人を突破して、死者も225万余人と、この3ヶ月足らずで倍増のすさまじさであった。すでにワクチンが各国で使われ始めたにも関わらず、更に強力な変異ウイルスが増殖中という。1月7日に11都道府県に発出された緊急事態宣言は、2月7日解除の予定が1ヶ月延期され、今も医療機関の崩壊が叫ばれ続けている。

 高齢者である私自身は不要不急の要件なき身とあって、ステイホームの毎日。先日送られてきた神田順先生の「小さな声からはじまる建築思想」(現代書館)の書評に加えて、三浦君がせっかく立派な論文集として出版してくれた本についても書評を書かねばと考えて、春一番が例年より早く吹いたとのテレビ報道のあった日に係わらず、散歩に出た。

小さな声からはじまる建築思想 神田順(著/文) - 現代書館

 寒風のなかの散歩中に思い当たったのは、神田先生の著も、まほろば賞を受賞した3人の論文に共通しているところは、「自覚」「生命」を第一とする教育者としての使命感であった。

 神田先生は、東大本郷キャンパスでは建築構造学の世界的権威でありながら、建築基準法の限界から建築基本法の策定を提言し、東大柏キャンパスに移って、新領域創成科学研究科の環境学分野にあって、阪神・淡路大震災や東日本大震災の復興に当たって、建築の安全問題と共に、人間が安心できる生活環境についての体験著であった。

 また、北九州市大のD.バート君の論文は「3つのポストを超えて ポストモダン・ポストインダストリアル・ポストコロナ」と題し、「ポストモダンは思想学者に向けたものであり、ポストインダストリアルは経済の観点における議論が中心であった。ポストコロナは人々の生命を脅かすものであるとして、世界中の「日常」を変える衝撃であった」とする。彼はベルギー人らしい世界観をもって、ポストコロナ社会を見通していたこと。

 「台湾で見たCOVID-19感染症」と題した台湾国立台北大学の王世燁君の論文は、台湾の歴史・民族・自然・風土を統括した上で、ポストコロナ時代にあって、台湾人らしい生き方の代表として、世界の人々が共鳴せざるを得ない説得力をもって「世界中の誰もがマスクを着用することで、人間が口を閉じる必要があることを暗示しているかのような今日、人間は地球の生態系のグループの一つに過ぎず、もはや地球の支配者であってはなりません。感染症の流行期間に多くの生態系の回復を振り返り、新しい世代を迎えるために更に謙虚な心を持つべきでしょう。」

 「エネルギーとDXから考える分散・クラスター都市」と題した摂南大学の大橋巧君の論文は、日本としての進路を明確に示したように思える。「オフィスビルや巨大工場等の職場に多くの人を詰め込む20世紀の都市モデルは、情報化社会ではその必要性は次第に薄れつつあったが、今回のCOVID-19の感染拡大は、そのことをわかりやすい形で人々に示した。幸い、進化したデジタル技術が人々の生活をよい方向に変化させるというDX(デジタル・トランスフォーメーション)の概念が一部実証された。」

 以上が4人の先生方の論旨のように思えたが、会員諸兄には是非共、原著の一読を勧める次第です。

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