
2026年2月、(一財)日本開発構想研究所の広報誌・別冊が阿部和彦代表理事から送られてきた。外岡豊氏から頼まれて「地球環境、災害、市民社会といったものを中心に、広く世の中の人々に知ってもらう価値がある」と判断し、別冊として刊行したとあり、一読させてもらった。確かに、このように紙媒体として出版されたことによって、私のような高齢者にも、星野克美氏の地球環境危機を論じた「The Anthropocene Realism」の内容が理解できた。
さらには外岡豊氏の日頃の欲求不満を解消するためのSDGsの限界論や「人新世生存」研究会の目的も理解することになった。
熊澤栄二氏の「温暖化における二酸化炭素の寄与についてーCOPILOTとの対話」に関しては、Microsoft社のAI「COPILOT」を通しての成果について、面白く拝読する。かねてからAIでCO2と気候変動の因果を確認したいと思いながら、これ迄にできなかった研究報告には感謝である。特に、ビル・ゲイツ氏の補遺は、注目に値する。
補遺
『長年、気候変動に対して警鐘を鳴らし続けてきたBill Gates氏はCOP30開催直前、自身のブログGates Notes(10月28日付)にて、以下のように新たなる見解を示したことで注目を浴びた。一部、私訳にて紹介したい。
気候変動の終末論者の見方は、およそ次のような論調であった。
今後20-30年以内に、破局的な気候変動が文明社会を破滅させるであろう。その証拠はわれわれのいたるところにある-見よ、あらゆる熱波や嵐は地球の気温上昇により引き起こされているのだ。気温上昇を抑えることほど重要なものは無い。
幸運なことに、われわれ人類にとってこの見方は間違っている。とりわけ最貧国の人々にとって気候変動が深刻な結果を引き起こすことに変わりはないが、人類滅亡に導くものではない。少なくとも今後数十年は、地球上のほとんどの場所において、人類は生存し繁栄することができるであろう。排出量の予測は減少してきており、正しい政策と投資をもってイノベーションは排出量のより一層の削減をわれわれにもたらすに違いない。
私自身、富山市の出身で、今も富山の自宅を一部賃借し、一部研究室に使用しており、能登半島地震でかなりの被害を受けていたので、橋本隆雄氏の報告と富樫豊氏の提言について関心をもって読ませていただいた。
SDGsの2030年目標達成や地球温暖化防止の目標も遅々として達成されそうにない今日、阿部氏の勇気で別冊の如き研究報告書が出版され、日本が動き出す兆しを見たようで、このBlogを書くことになった。2月8日の高市早苗政権の圧勝で、愈々「働いて働いて働いて」世界の真ん中に飛躍する兆しを実感している。
別冊で他に注目したのは、建築学会のレジェンド、神田順氏と糸永浩司氏の報告である。神田順先生の「建築の自然災害への対応の限界と社会のあり方」で、建築基本法の必要性を改めて教えられる。常々私も主張しているが、建築基準法で許可された建物は、既存不適格であっても、国(社会)が認めた建物である以上、その時の自然災害は「天災」として災害保険が適用されない不条理であること。
この建築基準法がある限り、金融庁は、建築には災害保険制度が適用されないとの風説もある。然るに今日の自然災害はゲリラ的であり、しかもそれは地球規模であることを考えれば、建築のつくり手と、それを維持する建物管理者と金融関係者等、社会制度として建物の安全が守られてしかるべきである。神田先生の主張は余りに正論であるが故に、社会がこれを認めようとしない現実がある。2026年度には「防災庁」が発足するに当たって、今年こそ神田先生の主張が認められることを願って。
また糸永浩司先生の「チッソ水俣病と東電原発災害の共通性」は、貴重な実態調査資料である。私自身、水俣市や福島県浪江町を何度か訪ねたが、復興による明るさのみが取り上げられ、悲惨な公害のあることがいつか忘れ去られている。
糸永氏はこれを憂いて、原発事故災害は「里山の長期公害」であり、水俣病は「里海の長期公害」と称して、両方ともまだ解決できていないと警告する。今も長期公害地域が存在しており、その双方を比較しつつ、少しでも解決の糸口を見つけたいとして一覧表に示している。2025年9月の建築学会大会協議会で報告された資料であるが、学会隠居の身の私としては、この別冊で詳細を学ばせてもらったのは有意義であった。
