問い: 2025年のEXPO会場と、1~2年遅れるかもしれないIRに向けて夢洲全体のプロジェクトの中で水素をどう扱うか。
尾島: 一番大きな課題は、再生可能水素、いわゆるグリーン水素をどう処理するのか、水素だけであれば、特に欧米などは副生水素でかなり大きな水素そのものを遠距離運んだり、活用したりしている。日本でも副生水素に関しては、コンビナートの中でいろいろやっているが、問題は再生可能水素、いわゆるゼロ工ミッションの水素をどう獲得し、それをどう商用化するかということ。
夢洲全体を考えた時に、電力換算して10万キロワット以上のプラントが必要になる。そうすると、年間10万トン以上の水素がないと夢洲全体がゼロ工ミッションの町にはならない。
エキスポ会場は6か月という会期を切っているので、だいたい5千トン~6千トンぐらいになる。万博会場としては、パビリオンに冷水と電力を供給し会場内の冷水と電力の全てを水素で賄おうとすると6千トンぐらいの水素が必要になる。そのグリーン水素を2025年迄にどのような形のサプライチェーンで夢洲会場に運んでくるのか。天然ガス並みの30円とか35円で水素を運んでこられるのかというサプライチェーン側の課題。商社、メーカー、ゼネコンに問い合わせている最中。
今すぐにできそうなのは、NEDOの川重プロジェクトの研究を積み重ねて、妥協すれば2千トンぐらいは確保できて、会場全体を水素でやったと言える。1割ぐらいの完全なグリーン水素と、3割ぐらいの川重プロジェクトを延長していけば、4~5割ぐらいはいけそうである。
第3案は、水素であっても下水とかバイオマスとか、日本には今20種頬ぐらいの多様なシステムがあり、水素を供給することができる。それらは500キロワットとか100キロワットと小さいが、そういうもの何種類か募集して、見える化する将来の技術を展示する。
万博協会はお金が無くとも、協会が供給規定を作らないといけない。グリーン水素から冷水とグリーン電力を作って供給する。供給規定は、来年か再来年のBIEの供給規定書に書き込まないと間に合わなくなる。将来あるプロジェクトだから、「誰でも手を挙げてください」「誰か背負ってください」という形の研究会を今やっており、まとまった成果はNEDOに報告している。
2030年目標ロードマップに、2025年時の万博でやった水素チームがパッケージとして東京や大阪の都市のインフラの一端として乗っていけるような戦略を環境省などに働きかけている。そのためにもパッケージのシステムとして日本型の脱炭素ゼロエミッションの都市インフラのプロジェクトを実現したい。
少なくとも会場のエンドユーザー(パビリオン)に対しては、グリーン電力と冷水は送りたい。政府は2030年の水素のロードマップを作っているので、その踊り場みたいなところで実証研究をしたいと考えているので、協会や商社などには頑張ってほしい。EXPO’70の地域冷房も4大商社のジョイントで事業主体となってもらった。今度も日本の4大商社ぐらいで今後の水素の事業を背負って頂きたい。大阪万博の時の地域冷房は、三井、三菱、住友、丸紅の4大商社全部が人を出して、事業をやって、収支が儲かった。
2020年7月の関西経済連合会からのヒアリング要旨を11月12日開催のDHC協会「EXPO’25会場内水素インフラ導入委員会」で報告した結果、大きな反対がなかったことで、この方向で政府や大阪府市、さらにはEXPO協会に働きかけたいと考えている。