都市科学事典の編集代表者 佐土原聡君の偉業

 2017年4月、横浜国立大学が50年ぶりの新学部「都市科学部」を開設したのを契機に、横浜の出版社・春風社が2021年2月28日、「都市科学事典」(Urban Science Encyclopedia)を出版した。その編集代表を務めたのが、初代都市科学部長の佐土原聡君である。

 佐土原君が4~5年前に、世界人口の2/3が集住する都市問題の課題解決という社会的要請に応えるため、横浜国立大学で多分野の知的資産の蓄積と最新の学術的成果である専門知を文系・理系にかかわらず多分野から集め、それらを連携し、経験知とも融合して実践的に活かす統合知を創り出すための都市科学部を創出する。そのためにも、事典を編集する。ついては、私が50年前に早大で初めて創出した都市環境学について、2頁程で原稿を書いてくれないかとの依頼であった。2頁で都市環境について書くのも大変であったが、それ以上に、最初に都市科学部を創ること自体、大学内での仕事はどれ程困難であり、さらにそのための情報収集も合わせた事典を編集するという途方もない夢を淡々と語る佐土原君の才能と包容力の大きさに驚き、かつ賛同しつつも、成功の可能性は限りなくゼロと予測していた。

 しかし、2017年4月には本当に日本で最初の新学部が横浜国立大学に誕生し、彼が初代の学部長に就任した。また、ネット時代にあって、紙ベースの事典が生まれる筈がないと考えていたのに、コロナ禍にあっても着実に出版作業が進行していて、世界中が緊急事態宣言下に置かれている2021年2月に公刊された。

 2021年3月5日には横浜国立大学編「都市科学事典」出版記念オンライン・シンポジューム「TRANSITION CITY 都市をめぐる知の交差」が15:30~18:00に開催されたのである。このシンポに私もZOOMで参加させてもらったが、この一週間前に佐土原君から事典の贈呈を受けた。1000頁を超える立派な箱入りの事典である。まずは3月2日付の佐土原君のさりげない挨拶文「執筆の感謝と都市科学分野の確立は緒に就いたばかりですが、刷り上がって参りましたので、謹んで贈呈します。」何の気負いも感じられない文面を見ながら、編集代表者としての「はじめに」を読み、10余名の編集委員と380余人の執筆者名(この中に私の研究室のOBが10余人)を眺めながら、手当たり次第に頁を捲って読み始めたら、これが面白くなって止められなくなった。都市科学をかくも面白く、1000頁を超える大著に編集されていたことに対して、ボッカチオの「デカメロン」もかくやありしと思った。1348年のペスト大流行時、フィレンツェ市内の寺院で10人が10日間、一人1日1回語り合った「デカメロン」は、時代が生んだ不朽の名作であるが、まさにコロナ禍にあっての「都市科学事典」も斯くの如くに思われたので、その読後感をハガキに記して、佐土原君への祝辞とした。

 私の研究室OBで教師をしている諸兄には、是非、公費・私費問わず、この事典を入手し、一読をお勧めする次第である。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です