3月13日(土)、都内には「竜巻・大雨・強風・洪水注意報」が発令されていたが、コロナ禍とあって、早大理工57号館での最終講義を在宅(Zoom)で視聴する。
講義の内容は、長谷見著「木造防災都市・鉄・コンクリートの限界を乗り越える」(2019.9 早大出版部)を参照すると分かり易い。多分、この書に盛り込めなかったであろう実物火災実験の歴史的秘話と共に、産業革命以降の近代建築や巨大都市の発展過程にあっての「火災研究」がもつ影響力の大きさを話すことが当日の主旨と思われ、参考になった。
長谷見君自身が語る二毛作人生(公務員としての建築研究所時代の1975-97、早大教授としての教育者時代1997-2021)で体験した実物火災実験を通して得た知識が、大災害に至る初期対策や前兆を見分ける「術」に対する教訓は、この講義でよく理解できた。
私の知る長谷見君は「災害弱者に対する人並み以上の関心の高さ」や「学位論文のフラッシュオーバーの理論解析等を通しての数学力」から、予測される大災害に対して、これからも信頼できる防災対策を提言できる第一人者として、三毛作の人生を成就して欲しい。
——- 忘れないうちに、私と長谷見君の親交記録 ——-
長谷見君と露崎暁君と二人で書いた卒論「住宅団地のシステム管理研究」を指導して、二人に共通した弱者を思う心根を発見。露崎君は若死にしたが、生命保険金を尾島研に寄附し、それがNPO-AIUEの基金の一部になっている。長谷見君の修論「大型冷却塔の技術評価」では、東京湾岸の海水冷却型火力発電所を空冷にすると、羽田空港は成立しないことを教えた。その成果で渡米費を得て、NTTに職を得た松島君とMITやGEの大型コンピュータセンターの調査を行った。その間に公務員試験に受かって建研へ。
1982年に提出した学位論文「区画火災の数学モデルとフラッシュオーバーの物理的機構」は、数学科の審査員をして、彼を早大に誘致するよう勧告。1997年に石山修武建築学科主任と建研から身請けする。その際、所長から建研の火災研究を支援する約束をさせられた結果で、今日に至っていた。
最終講義の参考書は、伊藤滋先生が早大に寄附した東京安全研の所長としての成果である。