中村桂子氏の「脱炭素社会への疑問-私は炭素でできている」に共鳴する

 8月25日、私のBlog21(2021年3月)でも紹介した(一財)日本開発構想研究所の「下河辺淳アーカイヴス」(Archives Report Vol.17、2021年6月号)に、JT生命誌研究館名誉館長のエッセイが記載されており、その表題を見た途端「よくぞ言ってくれた」と共鳴し熟読する。

 共鳴した一文を勝手に引用しようと、「・・・・・」と書き始め「しまった」と思ったのは、4p程のエッセイでありながら、引用したい文章に下線を引くと、なんと殆ど全てに線を引いてしまったからである。当たり前のことが当たり前に書かれていながら、それぞれに重要な指摘で、エネルギー源は炭素と酸素の化合物でCo2が排出されることや、その一方、人間の生命に必要な炭素化合物は全て生態系の中でつくる循環する炭素によること等、

 太陽と水とCo2あっての光合成で植物が生まれ育ち、その植物を食べ、O2を吸って人間が生きていることを知れば、「脱炭素社会」という言葉では、これからの生き方が見えなくなる。「まず自然の仕組みをよく知り、それを活かした社会に挑戦することこそが生きている人間の選択すべきこと」と諭す中村先生の指摘はさすがである。

 今一つ、さすがと思ったのは、2021年3月、三谷産業株式会社が「Carbon」を創刊したことである。一瞬、脱炭素社会に何故こんなPR誌を出したのかと思ったが、発行人である三谷忠照社長は、創刊に当たり『本誌Carbonは、未来を見据えて“非連続的”な変化を求めるビジネスパーソンの皆さまと、ベンチャー企業を含む異業種との接点を持つことの面白さを分かち合うために創刊されました。私たちの目的は、日本の産業界における一社一社の企業が、業種・業界を超えて新しい結合を生むための“触媒”となることです。』と記している。 

 また、その注として、「炭素」は結びつき次第であること、三谷産業は石炭の卸売からスタートし、当時のスピリットを大切にするとし、創刊号は「未来をつくる地方発ベンチャー」、2021年8月のNo.2では「大学発ベンチャーの潜在力」という刺激的な特集をしている。一民間企業が無料で配布する挑戦と、その斬新な内容に感心し、コロナ禍で明日の見えない日本にあって、中村桂子氏のエッセイや「Carbon」の創刊に勇気づけられた次第である。