2022年10月4日、昨年大病を患って生死の境目にあった時、偶然巡り会って助けられたという文月恵理さんを同伴して、塩地博文氏がDHC協会を訪ねられた。目的は、一緒に著した「森林列島再生論」の出版とこの出版によって自分自身の再生を賭けているという昔に変わらぬ元気いっぱいの塩地氏。昼食は伊勢廣がよいというので、店長の星野雅信氏に電話で予約。話題は相変わらず面白く、活力があって、とても生死を彷徨った人とは思えない。
森林再生と木を使っての建築は今や国是となっているが、既に私自身、上田篤先生と一緒に、2016年5月、藤原書店から「ウッドファースト」なる大著を編集し、また2017年7月には「日本の国富をみなおす」(NPO-AIUE)で「林業の蘇生」について著したこと。2021年6月にはOGの白井裕子さんが「森林で日本は蘇る」(新潮新書)なる傑作を著したことをBlogで紹介したこと等々から、改めて新しい情報とは思えなかったが、OBの高口洋人君も執筆しているというので一読する。
塩地さんの「プレカット」と「大型パネル」による木造住宅の普及活動は革命的で、これまでの戸建て住宅の供給並びに森林の再生に寄与することは何度も聞かされていたので、新しい知見ではなかった。しかし、それぞれの専門家はそれなりに定量化し、みえる化に成功した著作である。幸い、塩地氏蘇生の恩人・文月さんが最後にそのタネを明かしてくれたように、本書はDX時代の先駆けの価値がある。
日本列島唯一の天然資源は世界に誇れる森林資源であるに拘わらず、これまではCo2の吸収源としての評価から数兆円程度のアナログ評価であったのが、「大型パネル」に同定することによるデジタル評価では(1拠点50km圏の森林資源の計測もドローンを使うことで簡単に評価できることや金融の専門家がESG投資対象としてファンド構想を提案する等)数百兆円と100倍にもなること。この国富を利用できるのは全国で500ヶ所程で、地方再生の拠点が生まれること。 最終章では、説明が面倒な塩地構想を文月さんがいとも簡単に解説する。日本の国が抱える1000兆円の負債も代替できる程の仕掛けと仕組みを教えてくれる著作である。私もこの考え方で八ヶ岳山麓の新天地創造に当たって500拠点の一として、この手法を取り入れてみたい。