Blog#83 「戦後空間史」(2023.3.15 筑摩選書)を読んで

 2023年2月24日、日本建築学会で久し振り、都市環境・都市設備研究会主催「これまでの10年とこれからの10年」のテーマで40分程話す機会があった。特に私には「1970年の大阪万博を中心にして」との要請もあったが、何分にも50年も昔のことである。30代当時は、自分ながら迷うことなく日夜働き活躍できたのは、日本国中が戦後復興で、マズローの欲望の5原則にある「低次の欲求」に、日本中が一体になっての躍動期であったから迷いはなかった。

 然るに、今日の日本は、自然災害や原発事故、コロナパンデミックやロシアのウクライナ侵攻、SDGsやカーボンニュートラルでは化石賞であるから、日本の国力は低下するばかりで明るさが見えない。

 それは今、日本人は「高次の欲求」時代に入って、多様な社会での自己実現のあり方を巡って「日本中が迷える社会」の時代に入っているためではなかろうか。しかし、今の日本の置かれている立場ほど歴史上「個人個人にとってこれ程、豊かな時代はなかったのでは」と問いかけた。勿論、私に解がある訳では無かったが。

 そんな時、3月4日から14日、オセアニアに「グリーン水素を求める調査団」を組織して、参加した。そしてこの国々には日本の求めるグリーン水素が十分に供給可能なことを発見して、日本の若者達に地球上にまだまだ日本人の活躍する場のあることを実感した。

 その実態を報告書にまとめている時、筑摩書房から「戦後空間史」が送られてきた。早速一読して、中谷礼仁君等が日本建築学会で2017年に設けた特別研究委員会でのシンポジュームを下に、6人の著者が独自の視点で書き下したものであった。本書を読みながら、私自身の85年間の想い出と足跡を重ねてみて、考えもしなかった歴史の一辺に生きていたことを教えられた。

 是非、建築界に身を置く人にこの本の一読を勧めたい。日本の戦後空間史は私自身の建築界での人生にとって、明治維新同様の日本史を飾るに足る時代を生きてきたことを教えられたからである。明治維新、アジアに対して犯した問題を、まがりなりにも戦後の日本が解決し、世界史的に自由になった日本国の役割を考えることが出来る立場をもったこと。21世紀のこれからを考え、迷いながらも世界中に私達は自信を持って歩むことの大切さを教えてくれたように思えた。本書で、私も市川紘司さんのまとめられた第5章でシンポジューム05「戦後空間のアジア」のコメンテーターとしてZoom+YouTubeで発言したことも良く伝えられていて、御礼申し上げる次第である。

 このBlog83を書いていたとき、WBCで侍JAPANが優勝、歓喜に沸くグラウンドでの日本チームのマナーの良さがアメリカのみならず世界の賞賛を浴びるニュースに、日本の若者達にもっと自信を持って欲しいと願った。

                         https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480017697/

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