Blog68 飯山陽著「中東問題再考」(2022年5月 扶桑社新書)を読み、NOSPを再考する

 1976年東京生まれのイスラム思想研究家で、46歳の女性アラビア語通訳者の著で学んだ「中東のパラダイムシフト」。

・一つは、自由と民主主義、西側諸国と共存志向の親米陣営にあるサウジアラビア、UAE、イスラエル、エジプト

・一つは、現在の秩序を破壊し、暴力で拡張覇権を狙う親中陣営(親日にあらず)

 イラン(8500万人)、レバノンのヒズボラ、パレスチナのハマス、アフガニスタン(4000万人)のタリバン(10万人程)はリッチなテロ組織。

(イラク、シリア、レバノン、イエメンはイランの支配下にある)

 トルコやカタールは親米のふりをしつつ、この陣営に深くコミットする。

・2021年の経産省「エネルギー白書」によると、2019年の日本の原油輸入先

 ①サウジアラビア34.1% ②UAE32.7% ③カタール9.3% ④クウェート8.9% ⑤ロシア4.8%

 この現実を直視しない日本外交と日本の報道や専門家について実名で反論する明快さに脱帽する。

 特にアフガニスタンのタリバンを支援する日本政府や日本のジャーナリスト・専門家の間違いを糾弾する。また反米国家「イランは親日」というのも間違いである。8500万人のペルシャ人、イスラム教の国でアルカイダを匿い、国家主導でテロを実行。ホメイニの大量処刑を取り仕切った4人の司法官の一人、イブラヒム・ライシが現大統領。

 トルコ(8500万人のトルコ人、イスラム教が大部分)は、親日国の代表格というが、2003年から続くエルドアン大統領の独裁下にあって、イランと並ぶ「伝統的友好国」とか「価値観を共有する民主国家」との認識は間違っている。

 2020年9月、「UAE、バーレーン、イスラエルはアブラハム合意宣言」に署名。仲介者はトランプ政権。スーダンとモロッコも参加。エジプト・ヨルダンは既にイスラエルと正常化。いずれサウジアラビアもイスラエル人とパレスチナ人の国家問題解決に向かっている。

 以上の如き偏見とは思えない情報をこの新書から読み取った結果、これ迄の私自身の中東問題に対する疑問が相当解決した上で、NOSPを再開したい。

 2009年2月、公共建築協会主催でUAEのアブダビ・ドバイ視察時、オマーンのマスカット等を訪問。UAEでは2008年から地域冷房を義務化して、既に300万RTが稼働中。日本全国を合計しても100万RTの規模である。「この都市のまほろば」(中公新書vol.5 p206の図参照)に東京-静岡間の東海道メガロポリスに比較して、UAEのアブダビードバイ間の都市建設に200兆円投資、2020年のドバイ万博を機に、2030年迄にさらに100兆円投資予定。

 少なくとも、そのためには200万kW以上の電力が不足するに当たって、2000haのソーラーパネルを設置するスペースは、このアブダビ・ドバイ間の高速道路周辺に十分用意されていた。

 このような実態を知って帰国後、このソーラー発電とソーラーパネルの受注のみならずエネルギーを日本に輸送するための液化水素技術や水素船の研究をすべきと考えた。2009年4月からNOSP(日本オーバーシーズ ソーラープロジェクト)研究会を組織して、第1期(2009~2012年、14回)、第2期(2016~2017年、6回)、第3期(2018~2020年、4回)開催している。2020年のドバイ博は、この研究チームで訪問予定であったが、コロナ・パンデミックとあって、2020年8月5日の通算第27回以降、中止になっていた。

 このNOSP調査の実現に当たって、目下、2023年春、以下の地域を訪問したいと考えている。それは2025年の大阪・関西EXPO‘25会場にグリーン水素を少なくも1000トン活用したいと考えたが、水素運搬船がNEDOの実験船「すいそ ふろんてぃあ」(78トン)のみで、とても間に合わなかった。2030年であれば川崎重工(株)の1万トンの実用船が利用できるとあって、この水素量を輸出できるのはUAE、サウジ、オマーンが有望となった。

 然るに、この親米陣営の国への訪問団に当たっての事前調査が日本の政府関係者からはなかなか困難と聞課されていた次第が飯山著で何となく理解できた。従って、今後は直接、欧米の国々や現地関係者と直接連絡を取りたいと考えた次第である。

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<NOSP第1期研究会におけるプロジェクト構想>

<2022年時 中近東におけるグリーン水素輸出可能地域調査>

○UAE:
 ①三井物産(アブダビのルワイス工業地域内、ブルー水素20万t/年)
CCUS・ENEOS・NEDO・GIB
Helios Industry グリーン水素事業 K12AD(UAE)
 ②マスダール社 マスダールシティ2030年迄グリーン水素実証事業 48万t/年
 ③ドバイ MBRソーラーパーク、万博跡地利用状況  1300kW SIEMENS
○サウジアラビア:
 ④サウジアラビア 未来都市NEOM、グリーンアンモニア事業(米・デンマーク・独)   グリーンイニチアチブ 100万kW~400万kW ソーラー発電 グリーン水素650t/日
○オマーン:
 ⑤オマーン・グリーンエナジー事業 2032年~ 250万kWソーラー発電 180万t/年 グリーン水素  1000万tグリーンアンモニア輸出

<水素運搬船の開発>

日本にグリーン水素を海外から輸入するには、LNG船同様の液化水素運搬船の開発が不可欠である。2022年4月、川崎重工(株)が16万㎥型(4万㎥タンク4基≒1万トン)の基本設計承認を取得。2022年に1,250㎥(78トン)の「すいそ ふろんてぃあ」実験船の成果をベースに、2025~2030年には実用化予定。

Blog#67 楠浩一教授の「建物残余耐震計測法」と「BΣS」の開発普及に期待する

 2022年8月29日(月)、東大地震研の楠浩一教授の「加速度観測記録を用いた建物の被災度判定」の講義をwebで聴講するに当たって、彼の略歴をみて、急に一緒に聴講する仲間達もBΣS開発の意義を知ってもらうことにした。

 楠教授は九州で生まれ関西で育ち、1997年、東大生研の岡田・中埜研で博士修了。生研助手から2000年建研、2006年横国大、2018年東大地震研教授とあった。

 私にとって六本木の東大生研は、1964年の東京オリンピックで丹下健三の代々木競技場の模型実験をしていた場所であり、1994年から1997年迄、第1部の岡田教授と第5部の村上教授の共通・客員教授として4年間在籍し、思い出の多い研究所である。

 この間に1995年の阪神大震災があり、建物の安全性への関心を高くした。1997年からの建築学会長に続いて2004年迄、日本学術会議会員として、大都市や建築の安全問題を検討した。当時の学術会議の理系リーダー達の関心は、センサー技術の開発こそ日本のこれからの進路と熱心であったこと。同じ頃、私の早大研究室に、突然、三谷産業(株)がCAD-BIM開発に多大な研究費と社員を派遣され、共同研究を始めた。当時の大学院生や助手が増田幸宏君や渋田玲君達であったこと。2008年に早大を退職した後も三谷産業の役員に招かれ、また安全・安心をテーマとする(株)セコムからはデータセンターの設計を請け、研究助成は(公財)セコム科学技術振興財団の全面協力を受けたことから、この財団にBΣS研究所を附属できないか検討したが、(公財)の制度限界もあってCAD-BIMの研究継続だけは大型助成制度をつくって対処した。

 幸い、楠教授や増田君の今日のテーマに着目。これを支援すると共に、共同研究に入った。後に建築保全センター理事長時、次世代公共建築委員会の座長として「BIM部会」をつくり、これが今日のBIMコンソーシアムを形成、今日のBLCJに発展した。この間、BΣSとは“Building Safety, Security, Sensing, System, Service”の略で、建物の安全・安心を科学的に感知するシステムを構築して、これをサービスとする産業を育成することを目指してきた。

 しかし、現実にBΣSを実装・普及するには建物の所有者やテナント、設計者や施工者、管理会社の賛同が不可欠である。実装の第1ステップとして、増田君へのセコム財団からの研究助成で新宿の超高層マンションにBΣSの原型を設置することからスタートした。続いて洪水予測値に市庁舎を立地した時からの責任者として、川口市役所、また千里中央駅周辺のエリアマネージメントの防災分野を担当する大阪ガスグループにBΣS普及の第2ステップの導入を予定することができた。この間、楠教授の研究グループとエーラボの荒木氏等の協力で被災度判定のセンサーやサーバーの開発も進み、建防協の認定等に当たっては、三谷産業(株)の支援をお願いして今日に至った。

 2022年度はBΣS普及元年と考え、J.P.R.の渋田君には商標登録も(4部門)でお願いした。同時に、空調とインフィル部門をベースに、リフォームサブコンを目指していた三谷産業(株)がBΣSを事業化することでリフォームゼネコンへのステップを切ることが可能として、役員会で資金の支援を要請し、三谷社長の賛同を得た。

 この機会に、阪神大震災から30周年を迎える神戸市三宮駅周辺でのBCD事業化に向け、大阪ガスの岡本氏やDHC協会の中嶋氏には破壊された神戸市庁舎建て替えに当たって、この庁舎再建に当たって、是非BΣS導入に努めてもらいたい。 楠教授と中嶋氏の千里中央駅周辺エリマネでの第2、第3ステップに向けた話を聞いて、東京直下地震や東南海地震を想定するまでもなく、被災時の避難や建物の応急危険度判定に当たって、技術者の目視による判定の限界を考えれば、楠方式による被災度判定が如何に優れているかを認識した。願わくば、年末か来春には是非、神戸市で関係者を集め、直接、両氏のお話を聴かせて欲しい。