2022年1月3日(木)文化の日14:00~17:00 オンラインZoom方式
14:00 開会挨拶 西原 聡 14:05-14:50 基調講演 講演1:無電柱化の現状と景観への課題 土岐 寛 講演2:防災面からみた無電柱化の意義 向殿政男 14:50-14:55 休憩 14:55-15:55 事例報告(無電柱化の現状と課題) 報告1:兵庫県芦屋市の事例 成田イクコ 報告2:神奈川県横浜市の事例 山路永司 報告3:東京都の事例 西原 聡 報告4:沖縄県の事例 齋藤正己 16:00-16:55 自由討議 進行:山路永司 16:55-17:00 閉会挨拶 土岐 寛
Blog#44で2021年11月20日(土)の秋季シンポ研究発表会に参加した所感を記した。その後、本格的に電柱の地中化を日本景観学会のテーマとするなら、学会内部で特別に研究会を開設して勉強する必要があると申し上げた。何故なら、このテーマは既に国・都、他各箇所で既に法整備や対策のみならず予算化もし、インターネット等でも相当に取り上げられているだけに、「学会のテーマ」とするのは難しいのではと。会長と幹事に検討を依頼した結果が、本日の発表会になった。
昨年のシンポジュームと全く変わらぬメンバーで、ほとんど同じ発表方式で、シンポジュームも自由討論も進んだ。この一年間にどれ程の成果ができたかとお手並み拝見であった。文化の日にふさわしく良い天気で、講演者の会長・副会長と4人の幹事報告者には失礼と思いながら、庭を眺めながらのweb拝聴であった。
結論から申せば、本当に立派な報告であり、この難しいテーマに畏れることなく真正面から取り上げ勉強されていた。自分の足で歩き、現地を確認し、行政当局へのヒアリング等、少なくともコロナ禍の最中にも拘わらず、大きな成果を上げられた。日本の電々柱や電線網を地中化することによって、どれ程、美しい日本の自然の風景、さらには都市景観、防災やコミュニティ形成に寄与するか。論じるまでもなく、分かっていながら実現しない実態やその理由も事例報告や自由討論でよく理解できた。このテーマは日本の文化・文明史そのものを実にリアルに物語る研究であること。
シンポ終了後に山路幹事が、世話役の皆様と、日本景観学会として、これからも何年かこのテーマで研究しようとの提言されたことに共鳴した。何故なら2011年の東日本大震災と福島原発事故前までは原発依存型の全電力化とカーボンハーフ対策から、電力会社を中心に電柱・電線の地中化が推進されるものと考え、このテーマは時間とともに解決すると考えていた。しかし、今度の研究成果を聞きながら、大きな間違いであったと気づかされた。電力自由化と共に、発送電分離で、電力線地中化の大方針は消し飛んだ。さらには2030年のカーボンハーフ、2050年のカーボンニュートラルの実現に当たって、多くの地方自治体は再生可能電力に期待し、東京の再生可能電力を東北の洋上風力発電やソーラーに依存する計画。しかし、その送電線の新設とコスト負担が、景観とは無関係に問題になっている。防災やコロナ禍で光通信回線のネットワークをもつ二地域居住のライフスタイルが定着し、山奥の別荘地には自営の電線や電柱が建設されている。土岐会長の基調講演にあった、毎年2万本の電柱が撤去されているに反して、7万本が新設されているとの報告で、内訳を知りたく質問したが、詳細は分からなかった。
ロシアのウクライナ侵攻と欧米のインフレや円安で、日本の電気代が高騰している。こんな状況下にあって、電線の地中化への投資は極めて困難である。それでもやらなければならぬ。随所での事例研究を会員諸兄に期待する次第。